以前の記事でグラスウール系(繊維系)断熱材を使う場合の注意事項に関する記事を書きました。
現在では、建てられている住宅の約8割が繊維系断熱材(グラスウール)といわれておりますが、残りの約2割は「現場吹き付け系の断熱材及び断熱方法」が採用されております。
この現場発泡系の吹き付け断熱材のシェアはとても少なかったのですが、国の住宅性能に関する方向性や各吹き付け断熱材を採用する業者が少しずつ増えてきた影響からか、やっと約2割まで増え現在に至っているようです。
ではさっそく「吹き付け断熱材のポイント」について見ていきましょう!
吹き付け断熱材のポイント① 特徴
基本的に現場で直接、吹き付けるタイプの断熱材には、「硬質ウレタン」が多く使われております。
この「硬質ウレタン」は、高い断熱性能があり、住宅の内側から直接吹き付けるため、気密に関する施行も同時に行うことが出来ます。
気密工事も同時に行う上で、木材は年月の経過で痩せるため、木材への接着性能を高め、隙間(断熱欠損)を作らない吹付断熱材を使う必要があります。
断熱方法としては、「内断熱(柱と柱の間で行われる断熱方法)工法」となります。
したがって、現場にて直接、吹き付ける断熱材のメリットは、「高い断熱性能と気密性能」を同時に施行することが出来る上、大工さんなどが施行するグラスウール系の断熱材と違い、専門の吹き付け業者が責任施行で行うため、どんな住宅でも同様の性能が担保されるメリットがあります。
ただし、デメリットとして費用がグラスウール系(繊維系)断熱材よりも高額となるため、ローコスト住宅等ではほとんど使われることはありません。
◆参考記事:「グラスウールは住宅の断熱材に絶対使ってはいけない」
しかし、この現場にて直接、吹き付ける断熱方法にも注意事項があり、正しい施工方法を行わなければいけないポイントもありますので、そのポイントを見ていきましょう!
吹き付け断熱材のポイント② 厚みと断熱性能
硬質ウレタンを使って、現場にて直接吹き付ける断熱材は下の映像のようにイソシアヌレートとポリオールの2液を混ぜた原液を同時にスプレー発泡することで「硬質ウレタンフォーム」となります。
※種類によって、水や難燃剤なども混ざったりしております!
動画のように吹き付けられた「硬質ウレタンフォーム」が発泡して勝手に膨らみます。
柱などの寸法は決まっておりますので、吹き付けられる断熱材の厚みも限界があります。
吹き付けメーカーの「アクアフォーム」や「アイシネン」は、吹き付け断熱材の中でも100倍発泡と言われる種類の断熱材で「アクアフォーム」は硬質ウレタン、「アイシネン」は軟質ウレタンのようです。
※ネット上で調べた情報です。現在は異なる場合があります。
断熱性能に深く関わってくる「熱伝導率」は、「アイシネン」が0.035(w/mk)、「アクアフォーム」は0.034(w/mk)、「アキレスエアロン」が0.026(w/mk)そしてあまり知られていない「ファース工法」は0.021(w/mk)となりますが、これらの断熱材は「厚み換算」しなければ実際の断熱性能が算出できません。
したがって、熱伝導率だけでは単純に比較することが出来ませんし、吹き付けられたとしても「柱の厚さ分=最大吹き付け厚さ」ということが考えられます。
「厚み換算」は、どれくらいの厚さを吹き付けるとどれくらいの断熱性能があるかをしっかりと確認して他の断熱材と比較する必要がありますので、この辺は実際にオープンハウス等で目で見て、触って、直接聞くのが良いでしょう!
したがって、インターネットなどで調べて、熱伝導率の数値だけで性能を比較してはいけないことを覚えておいてください!
また、上記でご紹介した各メーカーや工法に使われている吹付断熱材でも、断熱材の「密度」の違いから「湿気を通しやすかったり、通しにくかったり」ことで、住宅に与える影響が違ってきます。
私が個人的に注目しているのは、「熱伝導率が高く、厚みが薄く、木材への接着強度が強く、湿気を通さない密度があり、難燃性も付加させてある」ファース工法やアキレスの吹付断熱材です。
湿気を通しやすい・通しにくいについては、次のポイントをご覧頂きたいと思いますが、「吹付断熱材だから何でも良い」と思わず、何事にもご自分の目で見て、体感して、知って下さい!
吹き付け断熱材のポイント③ 吹き付ける面材(下地)
吹き付け断熱材を使って、住宅を断熱する場合は、「何に」吹き付けるかを知っておく必要があります。
本来であれば、外断熱用のボード状の断熱材に吹き付けられるのが一番良いですが、この施行方法は、北海道でファース工法という独自工法で施行している「㈱福地建装」という会社が特許を持っています。
ここが私が注目する最大のポイントでもありますし、内(吹付断熱)外(外張り用断熱)のW断熱は住宅の断熱方法で一番良い断熱方法であり、その理由は構造体である土台や柱・梁などがヒートブリッジ(熱橋:物質を伝わって熱が逃げる場所)にならず、外気の影響も受け難いからです。
もちろん昔の高気密・高断熱住宅は寿命が短いと言われてきた理由でもある「木材の耐久性や含水率」にも要注意ですが、このファース工法は室内側に空気層(室内壁と断熱層の間)を設けて、換気の空気を常に循環させる独自の換気方法を行うことで、木材に呼吸させ、腐りづらい環境を作り上げているから驚きです。
詳細は専用のホームページ等でご確認下さい。 ⇒ 「ファース工法:㈱福地建装のホームページ」
以上のことから少し脱線しましたが、一般的に吹き付けられる下地材として多く用いられるのは、構造用合板や透湿防水シートなどに吹き付けられることが多いようです。
そこで「アクアフォーム」の施行マニュアルを見てみると「吹き付ける下地は透湿防水シート」となっておりますが・・・
じつは吹き付ける断熱材は透湿防水シートには吹き付けてはいけません!
なぜかと言うと、透湿防水シート協会という公の団体が望ましくない施行方法として紹介しているからです。
「透湿防水シート協会|透湿防水シート裏面からのウレタン等現場発泡断熱材の直吹き施工について」
実際の画像がこちらです。
【透湿防水シート協会様よりお借りしました】
このように透湿防水シートに直接、吹き付けると室外側にある通気層を塞いでしまう可能性があるため、状況によっては外壁の劣化が進みやすく、寿命が短くなることも考えられます。
実際にアクアフォームの施行マニュアルには、透湿防水シートをピンと張って下さいという注意書きがありますが、この施工は外壁の劣化を早める原因の1つとなり得るので、人が施工する以上、全ての物件で不具合が起きないとは言い切れないような気がします。
公的機関からオススメされていない以上、これから透湿防水シートに直接吹き付ける方法を採用している吹き付け断熱材を使って住宅を建築・購入しようとしている方は注意しましょう!
※上記、メーカーの断熱材を使われる場合は、必ず施工業者やメーカーへ確認しましょう!
吹き付け断熱材のポイント まとめ
これから国の方向性が省エネルギーに向かっている中で「現場で直接、吹き付ける断熱材の市場はどんどん大きくなっていく」と考えられます。
使う断熱材によっては、「高い断熱性能と気密性能」を持った住宅を作ることが出来るからです。
私は断然、「現場にて吹き付ける断熱材」をオススメ致します。
ただし、上のポイント③でお伝えしたように断熱材を吹き付ける部材によっては、オススメ出来ない種類の断熱材もありますので、十分ご注意下さい!
そしてポイント②でお伝えしておりました断熱性能にもご注意下さい。
断熱性能と深く関係してくる熱伝導率も数値だけをインターネットなどで参考にするのではなく、「厚み換算」しなければ本当の断熱性能は分かりません。
気になるメーカーや断熱材がある時は、実際にメーカーや断熱材を取り扱っている施行業者へ直接、問い合わせて下さい。
現場で直接、吹き付ける断熱材は柱等の厚さ以上の厚さを吹き付けることは出来ません。
一概にインターネット上の情報で吹き付け断熱材は良いが費用が高いという情報に踊らされ、多少お金がかかってもいいから吹き付け断熱材にしよう!と安易に飛びついてしまうことは絶対にしないで下さい!
次の記事は、この記事でもお伝えしておりますが硬質ウレタンフォームにはいくつかの種類があります。
その中でも100倍発泡品と言われている硬質ウレタンや軟質ウレタンについては「軟質ウレタン(100倍発砲)は住宅の断熱材に絶対使ってはいけない」をご覧ください。
次のページへ「軟質ウレタン(100倍発泡)は住宅の断熱材に絶対使ってはいけない」
コメント
断熱材を使った改修工事を検討していて家族と話していました。
でも、ある会社で嫌な目に遭ったので、人間性も含めて他所を検討しています。
施行中にも悪意を持った意地悪されたらたまりませんからね。
fact様、コメントありがとうございます!
まだまだ「施工してやっている」という態度の業者もたくさんあるかと思います。断熱リフォームは住宅にとっても、住む人にとっても重要です。慎重になって事を進めましょう!担当者や業者に少しでも不信感や違和感を感じる時はセカンドオピニオンも大事です!
はじめまして。
吹き付け断熱の記事を読みました。
相当お詳しい方みたいなので質問させて頂きます。
質問とは、吹き付け断熱の防音、防振、遮音製についてです。
注文住宅の新築に引っ越して数ヶ月が経ちます。
が、2階の足音が随分響く感じで誰かが2階に居る時は1階でくつろげる気がしません。
そこで色々と調べてたらこちらに辿り着きました。
以前、何処かの記事で新築現場で屋根に吹き付け断熱したら瓦屋さんが作業してるのが分からないくらい音が聞こえなかったと言うのを見かけた気がします。
そこで、1階天井を剥がして2階床下地に吹き付け断熱をしてはどうか?と考えています。
因みに床組は上から杉無垢床15mm、合板12mm、根太、梁、吊り天井、石膏ボード、クロス(一部無垢板仕上げ)です。
2階床下地に吹き付け断熱の防音製の効果についてアドバイスお願い出来ればと思います。
nakamu〜さん、コメント頂きましてありがとうございます。私はあまり詳しい人間ではありませんが、私の思いを返信致しますので、ご参考頂けたら幸いです。吹付断熱材は外からの音は聞こえにくい(窓が空いているなどは別)ですが、断熱層の内側(室内側)に音が反響しやすいです。しかし、音にも様々な種類がありますので、壁や床を伝わってくる音の場合は、振動を吸収する床材や防音マットなども検討してみてはいかがでしょうか!?吹き付け断熱材を一度、吹き付けてしまうと後戻りできなくなってしまいますし、振動の場合、根太や天井下地を伝わって聞こえてくるのではないでしょうか?どの方法を用いてもメリット・デメリットがありますので、費用対効果と可変性を重視してみてはいかがでしょうか?
『吹き付けメーカーの「アクアフォーム」や「アイシネン」は、「硬質ウレタン」の中でも100倍発砲と言われる種類の断熱材で「アクアフォーム」は硬質ウレタン、「アイシネン」は軟質ウレタンのようです。』
一つ目の「硬質ウレタン」の言葉は要らないんじゃないですか。
「硬質ウレタンの中でも・・・」、と言っておきながら「アイシネンは軟質・・・」って、どちらかわからないです。
内田さん、コメント頂きましてありがとうございます!ご指摘頂きました通り、私も内田さんがおっしゃる通りだと思いましたので、少し内容を変更致しました。今後とも宜しくお願い致します!
最後のリンクは
硬質ウレタン~
リンク先は
軟質ウレタン
になっていて、何を使ったらいけないのかわかりにくいです。
りょさんコメント頂き、ありがとうございます。ご指摘頂きまして、ありがとうございます。一般的に住宅用で使われる吹き付け断熱材は「硬質ウレタン」ですが、あるメーカーのみ「軟質ウレタン」と言っているケースもあるため、私自身もいろいろな場所で間違えており、申し訳ございません。なお、修正は完了致しました。